IT技術の進化や5Gの登場などにより、
電気通信は極めて重要な役割を担っています。
自然災害が激甚化する近年、電気通信を脅かすリスクには最大限備えておきたいところ。
予測できないリスクの最たる例が自然災害でしょう。
その中でも突発的で発生頻度も高く、
かつ規模が読めないのが「雷」です。
このサイトでは、自然災害の激甚化時代に求められる落雷対策、避雷設備(避雷針)について考えていきます。
避雷設備を検討中の設備設計士の方などはぜひチェックしてみてください。
株式会社落雷抑制システムズ
松本敏男 社⻑
公共施設、電力施設、スポーツ施設、宗教施設、工場、鉄道/道路、ビル/マンション、商業施設と様々な施設に3300台以上のPDCE避雷針を導入。従来の雷を呼び込む避雷針とは異なり、「雷を落とさないようにする」本質的な落雷対策を提唱している。
Zenken
落雷対策調査チーム
1975年に語学教育事業をスタートさせ、現在ではITコンサルティング事業をはじめ各種事業を幅広く展開。今回は新IoT時代を生き抜くための落雷対策について、豊富な導入実績を誇る落雷抑制システムズの松本社長にお話しを伺いました。
POINT
結論
ベンジャミン・フランクリンによって、
避雷針が発明されたのは1752年。
それから250年以上が経った現在も、先端部分が針のように尖った避雷針による落雷対策が主流となっています。
こうした従来型の避雷針は雷を積極的に呼び込み、電気を地面などに放出することで、人や建築物への直撃雷を回避しています。
ところが、この落雷を積極的に呼び込む行為そのものが、この新IoT時代において大きなリスクとなっているのです。
例えば、オフィスビルでは招いた電流が建物内部の回線に伝わってしまい、サーバーがダウンするなどの被害例が起きています。
その他にも工場、発電所、交通機関、学校など電気を使うあらゆる施設で、こうした被害が後を絶ちません。
つまり、雷を誘導する従来の避雷針は「建物内部の電子機器を守るという時代のニーズを満たしていない」
と言えます。
その理由や具体的な被害例を
見てみましょう。
REASON
理由
従来の避雷針だけでは電子機器が損傷
EXAMPLES
例えば
従来の避雷針を設置した施設で、建物内部の電子機器などが破損するケースが近年増えています。その事例を施設ごとに紹介します。
ビル屋上に避雷針を設置していたが、雷サージが強くサーバーがダウンした。
中国の物流工場で、落雷による爆発事故が発生。避雷針に雷が落ちたが、電流を逃す機能が動作しなかったことが原因となった。
風力発電施設で直撃雷によるブレードの破損が発生。ブレードの一部が広範囲に飛散し、周辺の建築物や道路に落下する二次災害に発展した。
照明塔につけた避雷針に落雷し、照明の制御モジュールが破損した。
三重塔に付けた避雷針に落雷し、内部に付けてあった火災報知機から出火した。
船舶の避雷針に落雷し、レーダ、ジャイロコンパスなどが損傷した。
電波塔の避雷針に落雷し、地電位が上昇して付近の民家の家電製品が故障した。
小学生が1人で下校していた際、雷が鳴り出したため近くの農道に避難。持っていた金属製の水筒に落雷し、病院へ搬送されたが死亡した。
落雷によって空調設備の機能が停止し、鶏舎内の鶏が死亡した。
POINT
結論
Consideration
考察
「落雷しにくさ」を追求した
新時代の避雷針
従来の避雷針は、積極的に雷を引き寄せることで、人や建物への直撃雷を防ぐのが目的。そのため、プラスに放電しやすい先端が尖った形をしており、ここにマイナスの電気を帯びた雷電流を誘い込んでいます。
一方、PDCE避雷針は写真にあるように、キノコのような形が特徴。PDCE避雷針の上部は雷雲と同じマイナスの電荷を帯びているうえ、放電開始電圧も針タイプよりも遅いため、落雷しにくい構造となっているのです。雷を呼び込む従来の避雷針はいわば“被雷針”であり、「避ける」という本来の“避雷針”の役割を求めるならPDCE避雷針を選ぶべきでしょう。
3300台以上の幅広い設置実績
PDCE避雷針はオフィスやビルをはじめ、学校や病院、鉄道会社、船舶など様々な建造物の落雷対策として活用できます。導入実績は3300台以上(※情報は2022年4月時点)。設置されている施設も幅広く、横浜国際競技場(写真)をはじめ様々な有名な施設で利用されています。従来の避雷針では防げない雷サージによる被害や、避雷針があっても起こってしまう事故を防ぐためにも、これからは「雷を呼ばない」PDCE避雷針のニーズが高まっていくでしょう。
PDCE避雷針の設置例をCHECK
Examples
設置例
Q&A
建物に取り付けることで落雷から建物を守る役割を求められる避雷設備、避雷針。その仕組みや種類、有効範囲、設置場所、設置基準など気になるポイントを避雷設備の専門家である株式会社落雷抑制システムズの松本社長にお聞きしました。
従来の避雷針は先が尖った形状をしており、先端部分から放電することによって雷を誘導する仕組みです。誘導した雷は、導線を通って地面に埋め込んだアースに向かってに流れます。ただし、避雷針はあくまで直撃雷への外部対策で、雷サージによる誘導雷を防ぐための内部対策が必要になります。
避雷針には大きく分けて、従来の先端が尖った針型のものと、PDCE避雷針のようなキノコ型のものがあります。この2つはまったく異なる仕組みで直撃雷の対策を行っています。従来型はあえて雷を誘導して地面などの流すことで人や建物を保護、一方のPDCE避雷針は「雷をそもそも呼ばないようにする」対策であることが、大きな違いです。
避雷針の有効範囲は、例えば20mの高さの建物なら頂上から下に向かって60℃の角度までは保護範囲となります(旧JIS)。従来の避雷針もPDCE避雷針も、新JISや旧JISで保護範囲が決められており、設置の際はJIS規格に沿って設置箇所や個数を決定します。PDCE避雷針の場合、建築基準法適用外の建物であれば、建物の高さの5倍の半径が保護範囲(20mの建物なら半径100m)となります。
避雷針に雷が落ちると、基本的には導線を通って地面のアースに向かって電流が流れていきます。しかし雷が大きいと、地表を通った雷電流によって感電や漏電を引き起こし、周辺に被害を及ぼすことも。また、直撃雷によるリスクを完全に防げたとしても、落雷によって生じた雷サージは避雷針では防げないため、別途内部対策が必要となります。
避雷針の設置場所は、高層ビルなのか、開けた場所なのかによっても異なります。基本的にはJISで規定された保護角を参考に、保護したい部分をすべてカバーできるように設置します。1台で建物すべてがカバーできるとは限らないため、場合によっては複数個の設置が必要になることもあるでしょう。
20mを超えた場合には「避雷設備」が必要になるのであって、必ずしも「避雷針」が必要になるのではありません。高層ビルの地上から60m以下は側撃雷の保護が免除されているという例外はあります。また、消防法では危険物を多く取り扱う施設に設置することが決められており、低い建物でも設置の義務が生じます。
雷サージとは、雷が落ちたことによって瞬間的に異常な高電圧が発生し、その結果建物に異常な電流が流れることを指します。雷サージが起きた場合、SPDなどの内部対策が必要となりますが、それでも100%防ぎ切れるわけではありません。従来の雷を呼び込む避雷針ではむしろリスクが増えてしまうため、雷を落とさない本質的な対策が何より大事になります。
前提として「法定耐用年数」は減価償却に用いる年数の話で、製品自体の物理的な寿命を指しているわけではありません。避雷針は「建物の付帯設備その他」に相当し、法定耐用年数は15年。PDCE避雷針の設計寿命はMagnum で30年、その他のモデルは10年です。
避雷針の価格は、従来型ならピンからキリまでありますが、PDCE避雷針で言えば本体50万円~です。ただ実際には設置工場費用が高く、工事だけでも新設の場合は100万円以上はかかると考えておいてください。移設の場合はもう少し費用が安くなりますが、価格は設置場所によってケースバイケースのため、見積もりをしてもらうのが確実です。
落雷による電子機器の故障を防ぐため、内部対策としてSPD(サージ保護機能)の設置は有効。その他、耐雷トランスというSPDの機能をさらに高めたような設備もあります。ただし、こうした内部対策だけで雷害被害を食い止めることはできません。あわせて避雷針などの外部対策としての避雷設備の設置をおすすめします。
高さ20m以上の建物には、建築基準法によって避雷針の設置が義務付けられています。落雷は必ずしも高い建物に発生するわけではありませんが、結果的に高い建物により多く落ちているという事実もあります。高層ビルやマンションは、法律に沿って避雷針を適切に取り付けることが大切です。
データセンターなどの膨大なデータを保管している場所では、落雷による被害は致命的。実際にベルギーのgoogleでは、落雷による停電で一部のデータが完全に消失してしまったという事故があったようです。気候変動によって落雷の頻度も上がってきている昨今では、これまでよりも強固な落雷対策が必要です。
オートメーション化が進み、産業用ロボットなどの精密機器を導入している工場が多くなりました。膨大なネットワークの接続で、配線が数十m〜数百mにも及ぶこともあるようです。落雷による回線や機器の不具合は、操業の一時停止による機会損失や、コスト増加につながります。事業の存続にも影響を及ぼし兼ねないため、落雷をできるだけ呼ばない対策が重要です。
多数の生徒の命を預かる学校では、指導者の判断力に加え、雷を寄せ付けない対策が何よりも重要です。雷雲が発生した際のマニュアルは指導者向けに発行されていますが、自然現象である雷を確実に予測するのは難しいのが現状です。学校管理下での落雷事故も実際に起きているため、これ以上被害を増やさないよう避雷針で対策しましょう。
風力発電は山の上に設置されていたり、尖った形状をしていたりすることから、雷の標的になりやすいのが特徴です。特にブレード(羽根)への落雷が多く、火災や部品の飛散などによる二次災害も起こりやすくなっています。被害を最小限に抑えるためにも、落雷を呼ばない対策を行いましょう。
鉄道や信号機など、交通機関への落雷は影響を及ぼす範囲が広いため、念入りな雷対策が必要です。小田急鉄道では列車への落雷によって遅延や輸送障害などが生じたことをきっかけに、2022年現在では数百台のPDCEを設置しています。その後落雷は起きていないため、落雷対策に行っての効果があると考えることができるでしょう。
船は昔から落雷を受けやすい構造物の一つですが、昔の木造に比べると、現在の金属製の船のほうが被害は抑えられているようです。とはいえ、レーダーやジャイロコンパスなどの電子機器に頼っている機器が増えたことで、業務に支障を及ぼす機会も多くなっています。落雷をあえて呼ぶよりも、落雷を発生させない対策が安全です。
消費者に電気を供給するための鉄塔。落雷を受けると、停電を引き起こすリスクもゼロではありません。停電まではいかなくとも、一時的に電気の供給量が激減してしまう「瞬間電圧低下」によって使える電気に制限が出てしまうことも。SPDによる内部対策の他、停電対策としてUPSを設置するのも有効です。
遊園地やキャンプ場などの娯楽施設では、不特定多数の人を守れる対策が必要です。建物の中に逃げてもらうのが一番ですが、大人数を収容できる施設でない場合、雷を寄せ付けない避雷針を設置しておくと安心です。PDCEは、建物の高さにもよりますが、半径100mまでなら基本的に屋外も保護範囲に含まれます。
病院での雷保護は、医療機器や患者の命を守るために欠かせない重要な対策です。特に、人工透析機やMRI装置などの高価で敏感な機器は、雷害によって大きな損傷を受けるリスクがあります。PDCE避雷針の導入例では、雷が建物に落ちるリスクを減らし、施設や機器の安全性を高めることが可能です。また、この避雷針はメンテナンスの手間が少なく、コスト面でもメリットがあります。
内部対策を徹底しても、
雷サージは防ぎきれない
落雷対策には建物外部に設置する「外部対策」と建物内部に設置する「内部対策」があります。前者には避雷針、後者にはSPD(サージ防護デバイス)などが挙げられ、落雷対策はこの2つをセットで行うのが一般的です。
しかしながら、強い落雷が起きると「雷サージ」という異常な過電圧や過電流が建物内の各回線を伝って、サーバーやPCなどに悪影響を及ぼします。SPDを設置するなど誘導雷への内部対策をいくら徹底したとしても、こうした雷サージによる被害は起きてしまうのです。
雷はいつ発生するか、どれくらいの規模かまったく読めない自然災害。だからこそ、積極的に雷を呼び込むのはリスクが大きい行為と言えます。
従来の避雷針は
「人や建物を守る」のが目的
雷を積極的に呼び込む従来の避雷針は、250年以上前に発明されたものです。当時は落雷から人や建物を守るために作られ、その役割は大きく変わりませんでした。
ところが近年におけるIT技術の発達で、自宅、オフィス、学校、公共施設などあらゆる場所で電子機器が使われるようになりました。
従来の避雷針は、ITが発達した今の時代を想定して作られたものではありません。これからの時代は人や建物はもちろん、建物内部の電子機器をどう守るかが求められています。
また、雷電流は雨に濡れた地表を通る性質があるため、避雷針に落雷しても周囲の設備を故障させてしまうリスクもあるのです。周囲への影響も考えて「落とさないこと」を第一に考えるべきでしょう。